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D迂回(うかい)
迂回とは、一般用語では、
回り道とか遠回りの意味ですが、
詰将棋で「迂回」というと、2種類あります。
いずれも作意手順の攻手から分岐して、
(イ)分岐したところに戻るものと、
(ロ)分岐したところに戻らずに、何手か先で作意手順に合流するものです。
P図は、3一馬、3三玉、3二馬、同玉、4二飛成まで5手詰。
(3一馬に同玉や1二玉は4二飛成までで詰)
しかし、2手目3三玉(P2図)に、3二馬以下でなく、4二馬、2二玉、3一馬という手があります。
これも同玉や1二玉は4二飛成までで詰むので、3三玉とかわしますが、
ここでP2図に完全に戻っています。
ここから作意通り、3二馬、同玉、4二飛成でも詰みますし、
もう一度4二馬、2二玉、3一馬、3三玉を千日手直前まで繰り返すのも可能です。
これが(イ)の「分岐したところへ完全に戻る型」です。
Q図は、有名な古作(堀半七・作)。
2四飛打、1五玉、1六歩、同玉、2六飛引、以下19手詰ですが、
3手目から2五飛引、1四玉、2四飛で作意に戻る迂回があります。これも(イ)の型です。
この型は、キズとしてもごく小さいキズとして、完全作の扱いになっています。
解答者が迂回手順を答えた場合は、
「攻方は最短手順で」を適用して誤答とする考え方もありますが、
もともとが作品のキズですので、正解扱いにするケースが多いようです。
一方、R図は、1二桂成、同玉、2二金、同玉、2四飛、1二玉、2三飛成まで7手詰が作意ですが、
2手目1二同玉(R2図)に、2二金でなく、2三金、2一玉、2二金、同玉、2四飛、
1二玉、2三飛成までと、作意から分岐し、再び作意に合流する詰め方があります。
こちらは分岐地点のR2図には戻りません。これが(ロ)の型です。
この図では2手長いだけですが、もっと長手数の迂回もあり得ます。
この型は、分岐点から合流地点まで作意と違う手順となりますので、短篇作品では余詰とされています。
長編作品ではキズとして許されるケースもあります。
E成・不成非限定
作意が「成」のところ「不成」でも詰むものです。これも2つの型があります。
まず、(イ)の型。再掲O図は、1九銀、1七玉、5三角成、1六玉、2六馬まで5手詰が作意ですが、
3手目5三角不成でも、以下1六玉、2六角成までで詰みます。
このように、成る手と成らない手で、後の手順に影響がない場合は、キズとも見られず、
完全作の扱いです。
解答では、不成を含む手順を書いても正解となります。
一方、S図が(ロ)型です。2二飛成、1四玉、2四龍まで3手詰が作意ですが、
初手2二飛不成の手があります。
対して、1四玉は2四飛成までですので、「受方は長い方へ逃げる」のルールで1三玉と逃げ、
以下2四飛成、1二玉、2二龍まで5手かかります。
つまり、成と不成で以後の手順が変わってきます。
「嫌がらせ不成」と呼ばれている手で、悩ましいところです。
この型は、キズとしないで、解答は「攻方最短」のルールを準用し、
成の方の手順を採るのが一般的となっています。
以上の説明は、飛角歩についてです。
飛角歩は、「成れば利きが増える。成る前の利きは、成ってもすべて残る」駒なので、
普通は成る方が有利であり、上の説明の通りで良いと思います。
一方、銀桂香は、「成ることにより、新しく発生する利きもあるが、なくなる利きもある」駒であり、
成と不成は全く別の手になりますので、事情が少し違ってきます。
銀桂香は、(イ)型の「後の手順に影響がない」場合でも、多少のキズと思います。
(ロ)型の場合は、たとえばT図。
作意4三銀成、5一玉、5二金まで3手詰のところを、
4三銀不成、3三玉、3四銀成、2二玉、2三成銀、1一玉、1二歩、
2一玉、1三桂までという手順は、かなり深いキズ、余詰と言っても良いと思います。
なお、このEは、作意「成」のところを「不成」とした場合の話で、
作意「不成」のところを「成」でも詰むものは、すべて余詰です。
(最終改稿2016年9月11日)
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