-14-

D迂回(うかい)

迂回とは、一般用語では、

回り道とか遠回りの意味ですが、

詰将棋で「迂回」というと、2種類あります。

いずれも作意手順の攻手から分岐して、

()分岐したところに戻るものと、

()分岐したところに戻らずに、何手か先で作意手順に合流するものです。



P図は、3一馬、3三玉、3二馬、同玉、4二飛成まで5手詰。

(3一馬に同玉や1二玉は4二飛成までで詰)


しかし、2手目3三玉(P2図)に、3二馬以下でなく、4二馬、2二玉、3一馬という手があります。

これも同玉や1二玉は4二飛成までで詰むので、3三玉とかわしますが、

ここでP2図に完全に戻っています。

ここから作意通り、3二馬、同玉、4二飛成でも詰みますし、

もう一度4二馬、2二玉、3一馬、3三玉を千日手直前まで繰り返すのも可能です。

これが()の「分岐したところへ完全に戻る型」です。


Q図は、有名な古作(堀半七・作)

2
四飛打、1五玉、1六歩、同玉、2六飛引、以下19手詰ですが、

3手目から2五飛引、1四玉、2四飛で作意に戻る迂回があります。これも()の型です。

この型は、キズとしてもごく小さいキズとして、完全作の扱いになっています。

解答者が迂回手順を答えた場合は、

「攻方は最短手順で」を適用して誤答とする考え方もありますが、

もともとが作品のキズですので、正解扱いにするケースが多いようです。

            
 

一方、R図は、1二桂成、同玉、2二金、同玉、2四飛、1二玉、2三飛成まで7手詰が作意ですが、

2手目1二同玉(R2図)に、2二金でなく、2三金、2一玉、2二金、同玉、2四飛、

1二玉、2三飛成までと、作意から分岐し、再び作意に合流する詰め方があります。

こちらは分岐地点のR2図には戻りません。これが()の型です。

この図では2手長いだけですが、もっと長手数の迂回もあり得ます。

この型は、分岐点から合流地点まで作意と違う手順となりますので、短篇作品では余詰とされています。

長編作品ではキズとして許されるケースもあります。

  

E成・不成非限定

作意が「成」のところ「不成」でも詰むものです。これも2つの型があります。

まず、()の型。再掲O図は、1九銀、1七玉、5三角成、1六玉、2六馬まで5手詰が作意ですが、

3手目5三角不成でも、以下1六玉、2六角成までで詰みます。

このように、成る手と成らない手で、後の手順に影響がない場合は、キズとも見られず、

完全作の扱いです。

解答では、不成を含む手順を書いても正解となります。


一方、S図が()型です。2二飛成、1四玉、2四龍まで3手詰が作意ですが、

初手2二飛不成の手があります。

対して、1四玉は2四飛成までですので、「受方は長い方へ逃げる」のルールで1三玉と逃げ、

以下2四飛成、1二玉、2二龍まで5手かかります。

つまり、成と不成で以後の手順が変わってきます。

「嫌がらせ不成」と呼ばれている手で、悩ましいところです。

この型は、キズとしないで、解答は「攻方最短」のルールを準用し、

成の方の手順を採るのが一般的となっています。


以上の説明は、飛角歩についてです。

飛角歩は、「成れば利きが増える。成る前の利きは、成ってもすべて残る」駒なので、

普通は成る方が有利であり、上の説明の通りで良いと思います。

一方、銀桂香は、「成ることにより、新しく発生する利きもあるが、なくなる利きもある」駒であり、

成と不成は全く別の手になりますので、事情が少し違ってきます。

銀桂香は、()型の「後の手順に影響がない」場合でも、多少のキズと思います。

()型の場合は、たとえばT図。

作意4三銀成、5一玉、5二金まで3手詰のところを、

4三銀不成、3三玉、3四銀成、2二玉、2三成銀、1一玉、1二歩、

2一玉、1三桂までという手順は、かなり深いキズ、余詰と言っても良いと思います。


なお、このEは、作意「成」のところを「不成」とした場合の話で、

作意「不成」のところを「成」でも詰むものは、すべて余詰です。


(最終改稿2016年9月11日)
                            -14-