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2ページに書いた通り、詰将棋をする人には
2つのタイプがあります。
そのうちのひとつ、指し将棋の上達のために
詰将棋をする人には、
ここから後の話は必要ないかもしれません。
一方、自分で詰将棋を創る人、
詰将棋に芸術的な要素を求める人には、以後の話が必要と思います。
ここからは、詰将棋の「キズ」についての話になります。
作図した詰将棋が、ルール@ABの通り、余詰、不詰、詰上りに攻方持駒余り、
のどれか一つにでも該当すると、不完全作品です。
不完全作品は詰将棋の要件を満たしてなく、詰将棋として成立していないことになります。
3つのルールをクリアし、同時にルールC〜Iにより、攻方受方の双方が最善を尽くした手順が、
本手順としてひとつの手順に限定されれば、完成品(完全作)と言うことになります。
ところが、ひとつの手順に限定できない場合があり、これを作品の「キズ」といいます。
キズは、「不完全作に近い、深いキズ」から、「ほとんど気にしなくても良い、浅いキズ」まで、
さまざまなレベルのものがあります。
キズの扱いについては、2ページで書いたように、詰将棋の歴史の中で考え方が変化したものもあり、
現在もきちんとしたルールになっていません。
浅いキズとして不完全作とはならず作品発表もされているものもあり、
不完全の扱いになっているものもあります。
作品発表された場合は、解者がどう評価するかという話になり、マイナス評価を受けるのもあります。
ここでは、「キズ」の現状を説明しておきます。
@.遠打ちの非限定
L図の作意は、1三飛、2一玉、1二飛成まで3手詰ですが、
初手1四飛と打っても、合駒は無駄合なので2一玉と逃げるしかなく、
1二飛成までで、作意と同じ手順で詰みます。1五、1六、1七、1八、1九から打っても同様です。
このように、飛角香を、あるマス(L図では1三)より遠くからなら、
どこから打っても同じ結果となる手を「以遠打(いえんだ)」といいます。
以遠打は、手が限定されていないので「非限定」の一種ですが、
キズとしては、最も軽いもののひとつとされ、作品として普通に発表されています。
L図の初手は、1三飛以遠打で、1三から1九までどこから打っても良いわけですが、
解答は、最も近い「1三飛」とするのが一般的です。
再掲I図の初手2四香(以下の手順は9ページ)も、以遠打です。
逆に、「飛角香を打つ時に、このマスに打つしか詰まない、他のマスでは詰まない」場合、
これを「限定打(げんていだ)」といい、通常は評価が高くなります。
M図は最も単純な限定打です。2四角、2六玉、3五馬まで3手詰。
初手2四角が限定打で、3三以遠から打っては2六玉で詰みません。
M図の例は近打ちですが、遠打ちの限定打もあります。
A手順前後
N図の作意は、2三銀打、同金、1二金、同玉、2一銀不成、
2二玉、3二金まで7手詰。
これを、1二金、同玉、2三銀打、同金、2一銀不成、2二玉、
3二金まででも詰みます。
つまり「1二金、同玉」と「2三銀打、同金」を逆順にしても詰みます。これを「手順前後」成立といいます。
手順前後という言葉は日常でも(あるいは指し将棋でも)使います。
AをしてからBをするべき所を、Bを先にして後からAをして、結果は失敗となった、というように使います。
詰将棋の場合、A→Bの順なら詰み、B→Aの順なら詰まないというのなら、キズではありません。
N図は、逆順でも詰むので「手順前後」成立で、キズとなります。
手順前後成立は、現在では、短篇(手数が短い作品)なら余詰です。
長編(手数が長い作品)ではキズとして許される場合もあります。
B打(行)位置の非限定
O図の作意は、1九銀、1七玉、5三角成、1六玉、
2六馬まで5手詰ですが、
初手2九銀でも、以下、作意と全く手順で詰みます。
このように、駒を打つ(あるいは進める)位置が1手(または数手)だけ違っても、
後の手順に影響せず、作意と同じように詰むものです。
古い作品には時々出てきますが、現在では、短篇では余詰、
長編ではキズとして許される場合もあります。
C打(行)順の非限定
最もわかりやすい例は、複数の駒を一か所で交換するとき、
どの駒から行っても結果が同じになるというようなケースです。
これも、現在では、短篇では余詰、長編ではキズとして許される場合もあります。
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